漫画 / クロスゲーム

★★★★★
あだち充の最も得意とする甲子園ラブコメ。
週刊少年サンデーで連載していた頃、リアルタイムで読んでいたのだが、当時は正直なところ、心に響くものが薄かった印象だったことを覚えている。
その後、ネット等の評価が非常に高いことを知るのだが、『ラフ』や『H2』、そして『タッチ』に並ぶ作品であることに疑問符を持ち続けていた。
そして、この度の再読である。
侮っていた。
あだち充を侮っていた。
死に別れた若葉を軸に想いを交錯させる主人公とヒロイン。
ヒロイン青葉の隠れた想いをこんなに丁寧に描いている作品であることに今更のように思い知った。
物語を1巻から最終巻まで読んで、表向きは強く逞しく描かれている若葉の一貫した健気さ。
この健気さの描き方が尋常ではない。
その全ての伏線は、さり気なさの中に隠されている。
ふとした一コマの中に、ふとした日常会話の中に。
それら全てを感じ取ってこそ、裏設定である若葉の健気さが泣けるぐらいに伝わってくる。
他のあだち作品が直接的な表現だとするならば、『クロスゲーム』は間接表現の極致である。
ストレートではなく、大きな曲がるスローカーブのような見事なストライク。
あだち充は、本当に凄い。
そして、連載当時、この凄さに気付けなかった私。
鈍いなぁ。鈍いよ。
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