漫画 / チェンソーマン

★★★☆☆
巷で話題の『チェンソーマン 全11巻』を読了。
悪魔と契約して異能の力を得るというのは、よく見る設定だが、悪魔や契約の種類が豊富かつ個性的なので世界観には十分に魅力を感じる。
悪魔と人間との戦いということもあり、その描写はグロいのだが単にグロいだけで終わっている。何が足りないのか考えたのだが、『力強さ』なのではないか。
グロい漫画の秀作といえば『シグルイ』が真っ先に思い浮かんだのだが、あの漫画には『力強いグロさ』があった。それは執念であり、描写であり、怒りである。
その点、チェンソーマンは、グロさや心理描写が『アッサリ』し過ぎている。血も吹く出るし、体も切り刻まれるのだが、バトル中のキャラクターの『熱や感情』の描写が足りない。
これは、グロさを描く上で致命的ではないか。
チェンソーマンはバトル終了後の余韻は強く印象に残るのだが、バトル自体に異能のグロさからくる力強さは感じられなかった。バトル後の余韻が哀しく印象に残るのは、バトル前の『フリ』が上手く機能しているからなので、下手な作家ではないと思う。だが、バトル自体はグロく見える描写のみで全く印象に残らなかった。
上手く表現できないが、『怒りの導火線』の描き方が足りない気がする。
キャラクターも豊富で、設定も秀逸で、エピソードにも事欠かず、ラスボスも優秀なのだが、読後の印象は妙に薄かった。
週刊誌ではなく、月刊誌で連載されていれば、とんでもなく化けていたかもしれないと考えると、ものすごく惜しい気がした。
第一部完ということだが、続編をどういう世界観と設定で描くのかは気になる。
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