小説 / 蒼穹の昴
★★★★★
中国。清朝末期、西太后を中心とした国家の混迷ぶりをドラマチックに綴った物語。
この小説の白眉とされる点は、なんと言っても『西太后の人物設定』に尽きる。
残忍無比で清朝滅亡の根源とされる女性を『朽ち果てていく国家の運命を一身に背負った気丈な人物』として描き切っている。
設定自体に無理があるはずなのに、劇中の西太后がとても魅力的なのだ。
その虚構に見事な説得力を持たせたのは、凄いの一言である。
西太后をはじめ、李鴻章や袁世凱といった実在の人物にフィクションの人物を違和感なく絡めていき、一つの王朝の終焉を劇的に描いた傑作。
中国史の素養がなくても作者が巧みに誘導してくれているので、お薦めの物語。
文庫本、全四巻。
0