邦画 / キッズ・リターン
★★★★★
北野武監督の青春ボクシング映画。
金子賢がヤクザ役を、安藤政信がボクサー役を好演している。
この映画ではモロ師岡が安藤政信を堕落させる先輩ボクサーを演じているのだが、酒や反則技を昇り調子の安藤政信に教え込み、才能の開花を阻んでいる。
通常ならば、この先輩こそが諸悪の根源とするところだが、そうでないところに北野武の凄さがある。
本当に怖いのは堕落した先輩ではなく、『依存心』であることを暗に言っている気がしてならない。
安藤政信演じる少年は金子賢に付きまとい、金子賢に誘われるままにボクシングを始める。その金子賢がボクシングを辞めると、自分に親しげに接してくるモロ師岡の言うがままに酒や反則技に手を染める。
よく観ると、安藤政信は何も自分で決定していないのである。
金子賢が不良だから不良グループに入る。
金子賢がボクシングを始めたからボクシングを始める。
モロ師岡が反則技を教えるから使う。
モロ師岡が酒を勧めるから飲む。
本当に怖いのは、堕落することではなく依存することではないか。
これは楽な反面、とてもとても怖いことである。
印象的なラストシーン。
安藤『俺達、もう終わっちゃったのかなぁ』
金子『まだ、始まってもいねーよ』
ここでも安藤政信は金子賢に判断を委ねてしまっている。
人間としてはどうしようもないのは金子賢なのかもしれないが、彼の方が安藤政信よりも幸せなような気がした。
中年を過ぎた北野武が、これほど瑞々しい青春映画をリアルに撮ってしまう点に映画監督の才能を見た気がする。
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