ノンフィクション / 殴られて野球はうまくなる!?
★★★★☆
筆者自身が元高校球児、元大学野球の経験者であり、まさに野球と暴力が密接な関係にあった時代の経験者であることで、より一層の説得力がある。
主に扱われる暴力の加害者は監督をはじめとする指導者と上級生であり、絶対服従を強いられる現状は、野球に興味があれば第三者でも感じ取れる内容である。
それでも数々の取材では受動する側の選手たちの中には『愛情ある鉄拳は暴力ではない』と主張するものもあり、さらには一見、暴力とは縁遠い印象のある元ロッテ小宮山までが『全面否定はできない』といった立場であることに軽い衝撃を受けた。
暴力無しで野球が上手くなるなら、楽しめるなら、ないにこしたことはない。
かの清原和博にしても『1億円もらってもPL学園の1年生には戻りたくない』と言う。
一方でPL学園の寮生活こそが自らの原点と言う。正直、理解できない。
しかしながら、その絶対的な上下関係が仇となり、PL学園野球部は廃部となったのは事実。
気なるのは殴った監督に感謝しているのは、甲子園に辿り着いたレギュラー級の選手ばかりであること。
補欠、ベンチにも入れなかった者、故障により野球を断念せざるをえなかった者。
そういった選手たちが愛情を感じ取ったのか?
とても気になる読後感であった。
個人的には『殴る』という手段は、一番横着な解決方法だと信じたい。
0