小説 / 9・11倶楽部
★★☆☆☆
馳星周の小説。
新宿の救急救命士の織田は、路上で倒れていた少女を助ける。その縁から都知事の浄化作戦により両親を中国に強制送還された戸籍のない子どもたちと生活することになる。
日本ノワール小説の旗手である馳星周の小説としては、珍しいと言っていいほど主人公の織田はこれまでの小説と異なる。
この心優しい悩める主人公が如何に闇に落ちていくのか興味を持って読んだが、少々迫力に欠ける内容だった。
主人公の過去が子どもたちを助ける上手い動機付けになっているとは思ったが、物語にメリハリが足りないのではないか。
落ちるなら落ちる。上がるなら上がる。
どうにも主人公の葛藤が中途半端な感が否めなかった。
ラストシーンも主人公の微かな望みを垣間見ませる描写だったが、読後に満足感はなかった。
ファンとしては、残念。
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