漫画 / 放浪息子
★★★★★
アニメ化もされた志村貴子の代表作。
女の子になりたい男の子。
男の子になりたい女の子。
小学生二人の他愛のない願望は、中学、高校と思春期を迎えるとともに複雑化していく。
志村貴子の漫画といえば、『青い花』も有名だがそちらは未読である。
過去に『どうにかなる日々』という短い連載を読んだことがあるが、どうにも乗り切れなかった記憶だけが残っている。
この『放浪息子』、小学生の主人公が女装に目覚めてしまう序盤こそ無邪気な子供たちの交流が中心なのだが、中学生になり思春期を迎えるあたりからグイグイ惹きつけてくる。
それは周りからの奇異な視線や恋愛や将来など、『女の子になりたい』という願望との間に葛藤する主人公や友人たちの関わり方の描き方が優しくも厳しいからだ。
ラストは明るく締めるのか、厳しく締めるのか。
期待を込めて読み進めたが、物語に相応しいラストだと思う。
かつて『男の子になりたい女の子』であった高槻さんの涙は、大事なものに気づいたときにそれはもう手の届かないものになっていたという哀しさ。
主人公の彼女であるあんなちゃんの冗談めかした言葉は、彼女のこの先の人生に対する覚悟のように思えた。
登場する女性キャラクターが本当に魅力的で、小学生から高校生まで堪能した。
アニメも是非観てみたい。
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